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未成年ユーザーへどのように対応するべきか

未成年者によるウェブサービスの利用

未成年者による法律行為は、取り消すことができます(民法5条2項、以下法名略)。
これはウェブサービス利用にかかる契約についても例外ではありません。
すなわち、未成年者が利用者となるサービスにおいては契約が取り消される可能性があり、ひとたび契約が取り消されることとなれば、事業者としては当該未成年者に対し、対価として受け取った金銭を返還しなければならならず、別途利用分について請求することもできないということです。
返金のコストを考えれば、利益がないどころか、マイナスとなってしまうことは言うまでもありません。
今回は、このようなリスクをできるかぎり避けるためになしうる対策について触れていきます。

未成年者の保護

具体的な対策についてみていく前に、まず前提として、未成年者の法律行為が取り消される理由についてみていきます。
そもそも未成年者による法律行為の取り消しが認められるのは、未成年者の判断能力がまだ十分でないため、重大な結果を生じさせるものである法律上の権利義務の主体にさせることは妥当でないと考えられているからです。
もっとも、この取り消しができる場合には以下のように例外があります。
①両親などの法定代理人の同意を得た場合(5条1項本文)
②未成年者が単に権利を得、義務を免れる行為をする場合(5条1項但書)
③両親などの法定代理人が目的を定めて処分を許した財産につき、その目的の範囲内で財産を使用する場合(5条3項)
④両親などの法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産につき、財産を使用する場合(5条3項)
⑤未成年が営業を許されている場合につき、その営業をする場合(6条1項)
⑥未成年者が成人である、または両親などの法定代理人から同意を得たことを信じさせるために詐術を用いた場合(21条、大判大12.8.2)
⑦両親などの法定代理人、又は成人となった当時の未成年者が追認をした場合(124、125条)
⑧未成年者が既婚であるか、かつて結婚の経験がある場合(753条)
上記の場合が例外とされているのは、未成年者が、法律上の権利義務の主体となることになっても未成年者が不利益を被る心配がないとされているためです。
そして、取り消しのリスクを避けるためには、利用者である未成年者がこれらのうちいずれかの要件を満たしたといえるようにすることが重要となります。

未成年者による詐術

ウェブサービス利用についての対策という面からは、上記のうち特に①、⑥、⑦の重要性が高いといえます。
そして、⑥未成年者が成人である、または両親などの法定代理人から同意を得たことを信じさせるために詐術を用いた場合、は中でも対策が取りやすいと考えられます。

では、いかなる場合に『詐術』があったといえるでしょうか。
これまでの最高裁の判例を前提とすれば、ⅰウェブサービス提供者に対し、自分が成人であることを信ぜしめるため積極的手段を用いたとき(大判大5.12.6)、また、ⅱ未成年であることを黙秘した上で、他の言動と相まってウェブサービス提供者を誤信させ、または誤信を強めたとき(最判昭44.2.13)には『詐術』があったといえそうです。
もっとも、上述の通り、そもそもこの取り消しの制度は未成年者の保護のためにあることから、取り消しができない場合である『詐術』がある場合というのは狭く解されることになります。
たとえば、生年月日を入力する画面を設けた場合に、未成年者が成人となるような虚偽の生年月日を入力したというケースであっても、これだけでは未成年者による『詐術』があったとは言えないことがあるということです。

電子商取引及び情報財取引等に関する準則

この点につき経済産業省は、ウェブサービス利用が含まれる電子商取引について定めた、「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」のなかで、以下のように解釈の指針を設けています。
「詐術を用いた」といえるかについては、上記のような措置と虚偽の入力という事実のみで画一的・機械的な判断ができるものではない。未成年者が詐術を用いたと認められるか否かは、単に未成年者が成年者を装って生年月日(又は年齢)を入力したことのみにより判断されるものではなく 、未成年者の意図的な虚偽の入力が「人を欺くに足りる」行為といえるのかについて、他の事実も考慮に入れた個別の事実に沿った判断が必要である。すなわち、当該未成年者の年齢、商品・役務が未成年者が取引に入ることが想定されるような性質のものか否か(未成年者を対象にしていたり訴求力があるものか、特に未成年者を取引に誘引するような勧誘・広告がなされているか等も含む)、取引をした価格の多寡、及びこれらの事情に対応して事業者が設定する未成年者か否かの確認のための画面上の表示が未成年者に対する警告の意味を認識させるに足りる内容の表示であるか、未成年者が不実の入力により取引することを困難にする年齢確認や同意確認の仕組みとなっているか等、個別具体的な事情を総合考慮した上で実質的な観点から判断されるものと解される 。
http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160603001/20160603001-2.pdf(経済産業省)

上記指針によれば、例えば、未成年者を含む若年層をターゲットにしたサービスである場合、未成年者が成人であると偽ることがある程度想定されることから、詐術にあたる行為のハードルは高くなります。
したがって、生年月日の入力画面を設けるほか、料金が発生する段階で必ず警告画面を経由するようにしたり、年齢確認の必要な他のサービス等と関連付けたり、他の方法と組み合わせることが必要になります。

おわりに

対面の契約においては、相手方が未成年であるか不安がある場合、電話等で親などに同意があるかの確認をとることや、本人が成人であるかの確認も比較的容易です。
しかし、多数の利用者が想定され、しかも顔の見えない状態で契約をすることになるウェブサービスの利用については、この確認についても上記のように別の手段を用意することが必要になります。
現在、多様なウェブサービスが展開されていますが、未成年者を含む若年層を主なターゲットとしたウェブサービスは少なくありません。
後の紛争回避を含め、双方が心地よい関係を築いていくためにも、上記の対策は重要であると考えます。