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システム開発で追加費用を請求するために必要な事前準備

はじめに

システム開発の過程において、プログラム数が当初の予想を大きく超えた場合に、発注者に対して追加費用を請求できるか否かは非常に難しい問題です。本稿では、追加費用の請求が認められた裁判例(東京地判平成17年4月22日)を紹介します。
この事件は、システム開発の過程で、プログラム数(機能数)が、当初予定した182本から422本へ増大したことに関して原告が追加費用を請求したことに対し、被告が、追加業務について合意がないことや、当初見積がプログラム数を積み重ねて決定されたものでないことを主張し、その支払いを拒んだという事件です。

見積書での「別途相談」の効果

原告は、追加費用請求の根拠として、見積書に「作業着手後の機能追加、変更等により工数に大幅な変動が生じた場合は別途相談させていただきます」との記載があることを根拠に、増大したプログラムについて当事者間の報酬金の協議が整わなくとも相当額の報酬請求をすることができると主張してきましたが、この点については、「上記見積書は当事者間の契約文書ではないから、契約書の約定と同一の効力を有するものと評価するには問題がある。」として排斥されています。

追加費用請求の根拠

もっとも、裁判所は、プログラム数の増大が、二次検収後に発生した作業によるものであり、この作業が当初予定にないもの(追加プログラム)であると認定したうえで、見積書の上記文言の有無にかかわらず、「追加注文と評価される業務については、当事者間に相当の報酬を支払う旨の合意があるものと見るべきであるから、上記文言の有無にかかわらず、原告は被告に対して、追加注文部分について相当額の報酬請求権を取得するものというべき」と判示して、原告の追加費用の請求を認めました。

3つの教訓

この裁判例からは、第1に、見積書に「作業着手後の機能追加、変更等により工数に大幅な変動が生じた場合は別途相談させていただきます」との記載をしているのみでは追加費用を請求する根拠にはなりにくいことが分かります。よって、このような文言に法的効果を持たせたいのであれば、きちんと契約書上で定める必要があるといえます。

第2に、発注者側にとっては、追加費用の合意がなければ支払いを免れることができるわけではないことが分かります。追加注文と評価されれば、契約書に「追加費用は別途」などの定めがなくても、追加注文による追加費用の支払義務が生じます。

第3に、このような紛争においては「追加発注」か否かが非常に重要になることが分かります。そして、請求する追加費用が「当初発注された業務」の範囲に含まれない「追加発注」の費用であることの立証は、受注者に責任がありますので、受注者にとっては、「当初発注された業務」の範囲を明確にしておくことが肝要です。このためには、発注段階で業務範囲を明確化しておくことは勿論、どの段階でどの変更(追加)が生じたかの経緯についても、後に客観的証拠をもって立証できるように残しておくことが重要と思われます。