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平成30年著作権法改正がビッグデータ・ビジネスへ与える影響とは

はじめに

平成30年5月18日に、著作権法の一部を改正する法律案が国会で成立し、一部を残して、平成31年1月1日から施行されることになりました。
本改正の趣旨として、「デジタル・ネットワーク技術の進展により、新たに生まれる様々な著作物の利用ニーズに的確に対応するため、著作権者の許諾を受ける必要がある行為の範囲を見直」すことが挙げられています。
それでは、本改正は、今後のビッグデータ・ビジネスへどのような影響を与えるのでしょうか。改正著作権法第30条の4を中心に、その概要を確認していきたいと思います。

改正の背景

ビッグデータを解析したり、AIに機械学習をさせるには、著作物を含む大量の情報が必要となります。これまで、このようなデータ解析や機械学習に他者の著作物を使用するには、著作権法に個別に定められた権利制限規定に該当するか、そうでなければ権利者の許諾を得る必要がありました。
しかし、個別の権利制限規定では、複製・翻案はできるが公衆送信はできないなど、使用方法全体をカバーできないケースがあり、不都合が生じていました。
また、このような個別規定では、目まぐるしく進む技術発達に対応できないとの懸念が生じていました。
そこで、本改正では、これらの不都合・懸念に対応するべく、包括的な権利制限規定を創設することになったのです。

改正著作権法第30条の4

改正後の著作権法第30条の4は、次のような規定です。

(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第30条の4
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあっては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

このように、本条は、包括的な「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」をする場合の権利制限規定となりました。また、1号から3号は、「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」を例示列挙したものであって、制限列挙したものではありませんので、1号から3号にあたらない利用方法も、本条によって可能となることがあります。

改正著作権法第30条の4但書

もっとも、本条による利用が認められない場合として、改正著作権法第30条の4但書は、次のように規定しています。

「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」

どのような利用が著作権者の利益を「不当に」害することとなるのかについては、現段階では明らかではありません。もっとも、同条の前身となる著作権法第47条の7但書の規定(「ただし、情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物については、この限りでない」。)のように、情報解析等を目的とするデータベースが市場で有償により提供されているというような場合については、著作権者の利益を「不当に」害するものと解される可能性が高いといえます。

おわりに

このように、改正著作権法第30条の4により、ビッグデータ解析やAIによる機械学習など、人の知覚による認識を伴わない形での著作物の利用が広く可能になると考えられます。
もっとも、現段階では、いかなる場合に同条但書(著作権者の利益を「不当に」害する)へ該当するのか明らかではないため、同条を利用した著作物の利用には慎重になる必要があるといえます。