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有名デザイナーの生地で作ったハンドメイド品と不正競争防止法

ハンドメイド品販売と不正競争防止法

有名デザイナーがデザインした生地でハンドメイド品をつくり、販売する場合、いかなる法律が問題となるでしょうか。今回は、特に当該行為が不正競争防止法上の不正競争へ該当するかについて見ていきます。

不正競争防止法とは

不正競争防止法は意匠法や著作権法とは異なり、何らかの知的財産権について定めたものではありません。不正競争防止法は、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため(不正競争防止法1条)、あらかじめ不正競争にあたる行為を定めた上、これらに対して差止めや損害賠償の請求ができることを規定した法律です。したがって、不正競争行為があったと考える者は、自らの商品等について何ら登録手続等をしていなくとも不正競争防止法上の請求ができることになります。

考えられる不正競争防止行為

有名デザイナーがデザインした生地でハンドメイド品を作成し、販売する場合、問題となりうる不正競争防止行為は、以下の3つと考えられます。

①周知表示惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)

②著名表示冒用行為(同法2条1項2号)

③商品形態模倣行為(同法2条1項3号)

以下、それぞれの類型について検討していきます。

周知表示惹起行為(不正競争防止法2条1項1号)について

この類型は、周知な他人の商品等表示(*1)と同一または類似の商品等表示を使用等して、商品等の出所を混同させる行為を定めています。出所を混同させる、とは、もともと商品等表示を用いていた主体と、商品等表示を用いた主体とが同じであるものと誤信させること等(*2)をいいます。例えば、この類型が問題となったギブソンギター事件(東京高判平成12年2月24日判決)を例にとると、ギブソン社製でないレスポールモデルのエレキギターを見たときに、需要者が「このギターはギブソン社製だ。」と思った場合には出所の混同があるといえることになります。

この類型が定められた目的は、周知(*3)の商品等表示が有している信頼等にただ乗りする行為を防ぎ、この商品等表示の出所識別機能、品質保証機能、広告宣伝機能を保護することにあります。

では、有名デザイナーがデザインした生地で作ったハンドメイド品を販売する行為は、ここにあたり得るでしょうか。

まず、商品等表示には標章(*4)が含まれますが、生地上の柄は、標章の一つである図形にあたると思われます。そして、有名デザイナーがデザインした生地の柄であれば、少なくともこれらの主たる需要者層である女性に認識されているので周知性も満たしそうです。また、生地そのものを使って小物等をつくるわけですから、ハンドメイド品は同一の商品等表示を使用した商品にあたります。加えて、これを販売する行為は譲渡にあたることになります。

では、混同を生じさせることになるでしょうか。これについては、ハンドメイド品の売り手の側の販売の態様により変わってきます。例えば、商品等表示のもとの表示主体のブランド名のみを販売ページに掲げ、ハンドメイド品であることを表示しない場合や、積極的に「ライセンス品」などの表示をした場合には混同を生じさせるものとなるおそれは高いといえます。

 

*1 商品等表示とは、人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの(不正競争防止法2条1項1号括弧書)をいいます。

*2 この主体については製造者だけでなく、販売者も指します。なお、混同とは、この本文の場合のほか、ある者が他人の商品等表示を付して営業を行うことで他人の営業上の活動または施設と誤認混同を生ぜしめることをいいます(狭義の混同)。また、両主体に親子会社関係やグループ関係がある、またはフランチャイザーとフランチャイジーの関係であると誤認させることも混同にあたります(広義の混同)。

*3 周知とは、条文上の「需要者の間に広く認識されている」ことと同義です。需要者とは、その商品等の潜在的なものも含む取引者等を指し、商品等の種類によっていかなる範囲を指すかは異なります。例えば化粧品であれば、化粧をする年代の女性が需要者になりものと考えられます。

*4 標章とは、商標法第2条1項に規定する標章のことを指します(不正競争防止法2条2項)。そして、商標法2条1項によれば標章とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものを指します。

著名表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)について

この類型は、自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一又は類似のものを使用等し、する行為をいいます。前述の周知表示混同惹起行為との違いは、他人の商品等表示につき周知にとどまらず著名であることまでを要していること、及び、混同の要件を設けていないことです。著名とは、周知よりもより多くの人々に知られていることをいいます。

この類型が設けられた目的は、著名な商品等表示の持つ信用や顧客吸引力についてのフリーライド(ただ乗り)、ダイリューション(希釈化)、ないしポリューション(汚染)を防ぐことにあります。

では、ハンドメイド品の販売はこの行為に当たるでしょうか。

まず、他人の商品等表示と同一の商品等表示を使用した商品を譲渡する点については前記の周知表示混同惹起行為と同一です。もっとも、周知表示混同惹起行為と異なり著名性が要されますので、場合によっては、著名とまではいえないと評価されることもありえます(*5)。

 

*5 判例、裁判例で著名と判断されたのはフランスのファッションブランドであるシャネル(スナックシャネル事件、最判平成10年9月20日)、ビタミン製剤であるアリナミンA25(アリナビック25事件、大阪地判平成11年9月16日)、など、いずれも多くの人が知っているといえるものでした。

商品形態模倣行為(不正競争防止法2条1項3号)

この類型は、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡等する行為を定めています。模倣とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことをいいます(不正競争防止法2条5項)。なお、この規定が保護する「他人の商品」は、日本国内において最初に販売された日から3年以内のものに限られます。

この類型が設けられた目的は、他人商品の形態の模倣を禁止することにより、商品形態のためにコストのかけた者の利益を保護しようとするところにあります。

では、これはハンドメイド品の販売はこの行為に当たるでしょうか。

本類型にいう商品は、前2類型と異なり類似しているのみでは足りず、元の商品と実質的に同一であることが要されます。例えば、有名デザイナーのデザインした生地を用いたバッグが公式に販売されている場合に、この商品に似せて作ったほぼ同様のバッグを販売した場合には、この類型にあたることになり得ます。

おわりに

有名デザイナーがデザインした生地で作ったハンドメイド品を販売する場合、問題となる法律はこれだけではありません。ご自身が売り手となるようなECサービスの提供者となる場合には違法行為にあたらないよう注意することが重要といえ、またCtoC型のECサービスの提供者となる場合においては、違法行為が起こることを未然に防ぎぐことないし適切に対処することが重要になってきます。これらに対処し得るよう、何が問題となり得るものか事前に把握しておくことが重要です。