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利用規約のコピーは著作権侵害となるか

自社サービスと利用規約

ウェブサービスを展開するにあたっては、利用規約を用意することが不可欠です。
そして、インターネット上にも多くのひな形が公開されていますから、利用規約自体は手軽に用意することが可能です。
しかし、公開されているひな形はその性質上、特定のサービスについての一般的な共通事項を挙げたものになっており、これだけでは自サービスの独自性に由来する事態に対応することができません。
ではこのようなとき、自サービスと類似のサービスの利用規約をコピーすることは許されるでしょうか。
この点については、東京地裁平成26年 7月30日の裁判例が参考になります。

裁判例の概要

この裁判例は、時計修理サービスを営む者が、同業者によってウェブサイト上の利用規約を含む文言、トップバナー画像、及びそのサイト構成自体を真似られたとして、著作権侵害に基づく損害賠償等を求めた事案です。
裁判所はこの事案において、以下の通り示して利用規約について著作権侵害を認めました。

裁判所の判断

まず裁判所は、問題となった修理規約につき、以下のように示して著作権による保護を受けられないことが原則であると述べます。
『……一般に,修理規約とは,修理受注者が,修理を受注するに際し,あらかじめ修理依頼者との間で取り決めておきたいと考える事項を「規約」,すなわち条文や箇条書きのような形式で文章化したものと考えられるところ,規約としての性質上,取り決める事項は,ある程度一般化,定型化されたものであって,これを表現しようとすれば,一般的な表現,定型的な表現になることが多いと解される。このため,その表現方法はおのずと限られたものとなるというべきであって,通常の規約であれば,ありふれた表現として著作物性は否定される場合が多いと考えられる。……』
そもそもありふれた表現などは、むやみに権利を認めると他者の表現活動が不当に制限されることとなるため、著作権の保護の対象としないのが原則です。
そして裁判例は、修理規約が基本的にここにあたるとしているのです。

利用規約は創作的表現といえるか

しかしその上で、以下の様に「創作的な表現」である場合には著作権の保護の対象となりうると述べています。
『……しかしながら,規約であることから,当然に著作物性がないと断ずることは相当ではなく,その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には,当該規約全体について,これを創作的な表現と認め,著作物として保護すべき場合もあり得るものと解するのが相当というべきである。……』

そして本件につき、
『……これを本件についてみるに,原告規約文言は,疑義が生じないよう同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述するなどしている点(例えば,腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言4と同7,浸水の場合には有償修理となることを重ねて規定した箇所が見られる原告規約文言5の1の部分と同54,修理に当たっては時計の誤差を日差±15秒以内を基準とするが,±15秒以内にならない場合もあり,その場合も責任を負わないことについて重ねて規定した箇所がみられる原告規約文言17と同44など)において,原告の個性が表れていると認められ,その限りで特徴的な表現がされているというべきであるから,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号),すなわち著作物と認めるのが相当というべきである。……』
と示し、個性が表れているものとして「創作的な表現」であるとしています。

裁判例を受けての実務対応

本裁判例は、規約全体について個性が表れる余地があるとの基準をたてつつ、本件では上記のように、同じ事項を複数の条項で繰り返し定めているなどしている点に個性が表れているとして、著作権の保護の対象としています。
すなわち本件は、個々の条項でなく、同じ事項について繰り返し定めるなどの条項の構成自体に著作物足りうる創造性があるとしているのです。

従来、利用規約の条項などについては、どうしても同じような書きぶりになってしまうことから、原則的に著作権の保護の対象とはならないものと考えられてきました。
本件でも、上記判断の直前の段落で、条項ひとつひとつについては著作権の保護の対象とはならないと判断しています。
そうだとすれば、繰り返し定めている箇所などを除いたうえで、他社の利用規約を参考に自サービスの利用規約を作成することも許されうるとも考えられます。
しかし、法律上問題がなくとも、無断で他社の利用規約を真似たことがわかって炎上などする可能性はあります。
そして何より、自サービスにフィットした利用規約でないために、要所要所の局面で不都合が起こったり、思わぬ不利益を被る可能性もあります。
一見みな似ているように見えても、サービスの特徴、起こりうる問題、開発者側のサービスについてのスタンス等により、利用規約の内容は千差万別です。
心配なくウェブサービスを運営していくためにも、利用規約の作成にあたっては十分な検討が必要と考えます。