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侵害情報通知書への対応と利用規約

他人の権利を侵害する書き込み

たとえば、自身が運営するウェブサービス上の掲示板に、「〇〇は詐欺師だ。」など個人を誹謗中傷する内容の書き込みや、氏名住所などの個人情報の他人による書き込み等がなされているのを発見した場合、管理者としてはいかなる対処をすべきでしょうか。
今回は、設置したユーザー投稿型のサービスに、他人の権利を侵害する書き込みがなされた際に、管理者がなすべきこととなる手続き、及びこれを出来る限り回避するための利用規約の条項について触れていきます。

権利侵害書き込みがあるとどうなるか

他人の権利を侵害する書き込みがあった際、これを放置していると、
① 「侵害情報の通知書兼損害防止措置依頼書」
② 「発信者情報開示請求書」
もしくは
③ 「投稿記事削除仮処分申立書」
④ 「発信者情報開示等仮処分命令申立書」

⑤ 訴状
等が届くことがあります。
③ないし⑤は裁判所から届くものです。③、④では仮処分、⑤では訴訟です。
今回は、特殊な手続きが続くことになる①、②のうち特に、後述の利用規約での対策とも関連する、①の「侵害情報の通知書兼送信防止措置依頼書」が届いた場合について触れていきます。

送信防止措置に関する手続き

この書面で求められている「送信防止措置」とは、ユーザー投稿型サービスにおいては、該当書き込み等の削除を指します。
この書面を受け取った管理者としては書面にある該当書き込みの削除を検討することになります。具体的には、次のような手続きをとります。
(ⅰ)書面にかかれている事項を確認し、書面で判断できる場合には管理者が削除をします。書面上の要件等に不備があった際には、削除依頼者に再申し立てを要請するか、削除をしないことを決定します。
(ⅱ)書面からのみでは削除をすべきか判断できないときには、①の文書にある書き込みをした者(発信者)を調べ、削除の可否について意見照会をします。
(ⅲ)発信者が削除に同意する場合には、同意に基づいて削除します。
(ⅳ)発信者から、7日間以内に回答がない場合も、削除ができます。

プロバイダ責任制限法3条2項

このような手続きをとることになるのは、プロバイダ(今回のようなユーザー投稿型コンテンツの管理者も含まれます。)の責任等を規定する、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任法、以下「プロ責法」といいます。)の3条2項が、
(a)他人の権利が不当に侵害されていると信じるにたる相当の理由があるとき(同1号)、または
(b)発信者(書き込み者)に削除の可否について意見照会をした場合に、発信者が照会を受けてから7日を経過しても削除に同意しない旨の回答をしないとき(同2号)
の2つの場合に、管理者の発信者への損害賠償義務を否定しているためです。

対策のための利用規約等

上記の手続きはそれ自体が管理者にとって負担となるものであり、また書き込みをした者が削除に同意しない旨回答した場合には、仮処分の手続きに移行する可能性があるところ、その負担はさらに大きくなります。
そこで管理者としては、かかる手続きに入る機会を減らすため、
事前に削除する仕組みをつくっておくという対策をとることが考えられます。
第一には、利用規約において、
Ⅰ 他人の権利を侵害するような行為を列挙して禁止事項として定めておき、また、禁止事項に該当する書き込みがあった場合には管理者が自らの判断で削除することができる
という項を設けることが考えられます。
また、削除について、書き込みをした者が管理者に対し、自己の書き込みを表示する自由を侵害されたとして損害賠償請求をしてきた場合に備え、具体的には個々のサービスによって異なりますが、
Ⅱ 削除について管理者は一切責任を負わない旨、及び消費者契約法の適用がある場合、重過失がある場合にはその限りでない旨、当該場合は損害の限度が一定程度に限られる旨
の項を合わせて設けることが考えられます。
第二には、
Ⅲ 違反報告専用フォームや問い合わせ用窓口
を作っておき、禁止事項違反の情報を随時吸い上げて対応できる土壌をつくること考えられます。

おわりに

管理者は、いったん他人の権利を侵害する書き込みがされ、手続きが開始した以降、権利の侵害があるか等の高度な判断を求められる立場になります。
自身のウェブサービスをよい状態に保つためにも、事前の仕組みの設備が重要です。